この記事では、飲酒すると蚊に刺されやすい理由についてまとめています。
結論からいうと、ビールを飲んだあとに蚊が寄りやすくなったことを示す研究が複数あり、飲酒後は蚊への対策を意識する価値があります。
ただし、主要研究は人数が少なく、なぜ誘引が増えるのかという仕組みも完全には解明されていません。
そこで、ヒトスジシマカなどを使った実験内容から、体温・汗・二酸化炭素との関係、屋外でお酒を飲むときの予防策まで整理します。
バーベキューやキャンプ、ビアガーデンなどで刺されやすさが気になる人は参考にしてください。
飲酒すると蚊に刺されやすいと考えられる3つの根拠
「お酒を飲むと蚊に刺されやすい」という話は、単なる都市伝説だけではありません。
日本の研究者によるビール摂取実験や、アフリカのマラリア媒介蚊を使った別の実験で、飲酒後に蚊への誘引が高まった結果が報告されています。
ただし、研究規模や対象となった蚊には限界があります。
研究結果を整理すると次のとおりです。
| 確認項目 | 研究で分かったこと | 注意点 |
|---|---|---|
| 2002年の研究 | ビール摂取後に蚊の着地率が有意に増加 | 被験者は13人 |
| 2010年の研究 | ビール摂取後にマラリア媒介蚊への誘引が増加 | ビール25人・水18人で比較 |
| 原因 | 飲酒後の誘引増加は確認された | 詳しい仕組みは確定していない |
| 実際の対策 | 肌の露出を減らし虫よけ剤を使用 | 飲酒の有無にかかわらず有効 |
確認したい根拠は次の3つです。
根拠①:日本の実験でビール後に蚊の着地率が増えた
2002年にJournal of the American Mosquito Control Associationへ掲載された研究では、13人の被験者が350ml、アルコール濃度5.5%のビールを飲み、その前後で蚊の反応が比較されました。
その結果、ビールを飲んだあとは、飲む前より蚊が被験者へ着地する割合が有意に増加しました。
研究では汗中のエタノール濃度、発汗量、皮膚温度なども測定されています。
名古屋工業大学の研究情報では、この論文のキーワードとしてヒトスジシマカ(Aedes albopictus)が示されています。
ただし、被験者は13人と少なく、飲んだものもビール1種類です。
したがって、この実験だけで「お酒を飲んだ人は必ず刺されやすくなる」とまでは断定できません。
研究概要はPubMed「Alcohol ingestion stimulates mosquito attraction」で確認できます。
根拠②:別の研究でもビール後に蚊への誘引が増えた
2010年には、ブルキナファソでマラリアを媒介するAnopheles gambiaeを使った別の実験も行われています。
この研究ではビールを飲む25人と水を飲む18人を比較し、全身から出るにおいや呼気を使って蚊の反応を調べました。
その結果、水では変化がみられなかった一方、ビール摂取後には蚊の活動と人のにおいへ向かう反応が増加しました。
具体的には、ビール摂取後には蚊が飛び始める割合と、人のにおい側へ向かう割合の両方が上昇しています。
つまり、種類の異なる蚊を使った研究でも、ビール摂取後に人への誘引が増える結果が得られたことになります。
ただし、この研究も「ビール」を調べたもので、日本で日常的に見られる蚊を対象にした研究ではありません。
詳しい実験内容はPLOS ONE「Beer Consumption Increases Human Attractiveness to Malaria Mosquitoes」で確認できます。
根拠③:ただし飲酒後に刺されやすくなる理由までは確定していない
飲酒後に蚊が寄りやすくなる結果はありますが、「なぜ増えるのか」は意外とはっきりしていません。
2002年の研究では、汗中のエタノール濃度や皮膚温度と蚊の着地との間に明確な相関は確認されませんでした。
2010年の研究でも、呼気の二酸化炭素量や体温では、ビール摂取後の誘引増加を説明できませんでした。
そのため、「お酒で体温が上がるから蚊が寄る」と一つの理由だけで説明するのは正確ではありません。
2010年の研究者らは、アルコールの代謝に伴って体臭などの化学的な手掛かりが変化する可能性を仮説として挙げています。
しかし、これは仕組みとして確定した結論ではありません。
現時点では「ビール摂取後に誘引が増えた実験結果はあるが、その原因は未解明な部分が残る」と理解するのが適切です。
飲酒と蚊の関係で知っておきたい3つのポイント
飲酒後に蚊が寄りやすくなる理由を考えるには、蚊が人を見つける仕組みも知っておく必要があります。
蚊はアルコールそのものだけを検知しているわけではなく、呼気、皮膚から出るにおい、熱など複数の情報を組み合わせて吸血対象へ近づきます。
ポイント①:蚊は二酸化炭素や皮膚のにおいなど複数の手掛かりを使う
吸血するメスの蚊は、人から出る複数の手掛かりを利用して宿主を探します。
研究では、呼気に含まれる二酸化炭素と皮膚由来のにおいが重要な手掛かりであり、それらに熱などの情報が組み合わさって人への接近行動が起こることが示されています。
さらに、近年の研究では、人によって皮膚から出るカルボン酸などの量が異なり、蚊への誘引の強さにも個人差があることが報告されています。
つまり、飲酒するかどうかだけで刺されやすさが決まるわけではありません。
もともとの体臭や皮膚由来成分、周囲にいる蚊の種類、服装なども影響します。
「友人と同じ量を飲んだのに自分だけ刺された」という状況があっても不思議ではないのです。
ポイント②:体温や呼気の二酸化炭素だけでは飲酒後の蚊への誘引を説明できない
「飲酒すると身体が熱くなるから蚊が寄る」「アルコールを分解すると二酸化炭素が増えるから刺される」と説明されることがあります。
しかし、ビール摂取を直接調べた研究では、それほど単純な結果にはなっていません。
2002年の実験では皮膚温度と蚊の着地率に相関が確認されず、2010年の実験でも呼気の二酸化炭素濃度や体温では飲酒後の誘引増加を説明できませんでした。
したがって、体温や二酸化炭素が蚊の宿主探索に重要であることと、飲酒後に寄ってくる理由がそれだけで説明できることは別です。
体臭など複数の変化が関係している可能性がありますが、詳しい仕組みについては今後の研究が必要です。
ポイント③:ビールの研究結果をすべてのお酒に当てはめない
「飲酒で蚊に刺されやすくなる」と紹介される研究を詳しく見ると、代表的な2つの実験はいずれもビールを使っています。
2002年の研究では350ml・アルコール濃度5.5%のビール、2010年の研究ではブルキナファソの地元のビールが使われました。
そのため、ビールで得られた結果を、日本酒・ワイン・焼酎・ウイスキーなどすべての酒類へ同じ強さで当てはめる根拠は十分ではありません。
また、「何ml飲めば刺されやすくなる」「何時間続く」といった実用的な境界値も、これらの研究からは決められません。
一方で、屋外で飲酒する場面では蚊への対策を追加してもデメリットは少ないでしょう。
特に夏のバーベキューやキャンプでは、飲酒量に関係なく通常の防蚊対策を行うことが大切です。
飲酒中に蚊に刺されにくくする3つの対策
飲酒後にどの程度刺されやすくなるかには個人差がありますが、蚊への予防法そのものは飲酒していないときと変わりません。
厚生労働省は、屋外で蚊が多い場所へ行く際には肌の露出を減らし、虫よけ剤を使用するなど、蚊に刺されない対策を取るよう案内しています。
対策①:ディートやイカリジン配合の虫よけ剤を使う
飲酒しながら屋外で過ごす場合でも、基本になるのは人体用の虫よけ剤です。
厚生労働省は、日本国内ではディートまたはイカリジンを成分とする忌避剤が市販されており、製品の用法・用量と使用上の注意を守って使うよう案内しています。
そのため、飲酒後に蚊が寄りやすくなる可能性を心配するなら、まず効果が確認された虫よけ剤を正しく使うことを優先しましょう。
虫よけ剤は肌が露出している部分へ塗りムラができないよう使用します。
製品によって有効成分の濃度や使用できる年齢、効果の持続時間などが異なるため、手元の表示を確認してください。
公的な予防法は厚生労働省「ジカウイルス感染症に関するQ&A」でも確認できます。
対策②:長袖や長ズボンで肌の露出を減らす
虫よけ剤だけでなく、蚊が吸血できる皮膚そのものを減らすことも基本的な対策です。
厚生労働省は、屋外の蚊が多い場所で活動するときには、できるだけ肌を露出せず、虫よけ剤も使用して刺されないよう注意するよう案内しています。
そのため、夏の飲み会やバーベキューでも、蚊が多い場所では足首や腕を含めた露出を減らすことが有効です。
半袖・短パン・サンダルの組み合わせでは露出面が大きくなります。
暑い時期は熱中症にも注意しながら、薄手で通気性のよい長袖などを活用しましょう。
飲酒すると虫よけ対策を忘れやすくなることもあるため、屋外へ出る前に準備しておくと安心です。
対策③:汗をかいたら虫よけ剤を必要に応じて塗り直す
夏の屋外で飲酒していると、気温や活動量によって汗をかくことがあります。
厚生労働省は、忌避剤の効果は蒸発、雨、発汗などで持続性が低下するため、一定の効果を得るには適切に再塗布する必要があると案内しています。
そのため、汗を大量にかいたりタオルで肌を拭いたりした場合は、使用中の虫よけ剤の表示を確認して塗り直しを検討しましょう。
ただし、回数や間隔は製品ごとに異なります。
「飲酒中だから何度も大量に塗る」という使い方ではなく、必ず商品の用法を優先してください。
蚊に刺される可能性を下げるには、虫よけ剤、服装、蚊の多い場所を避ける対策を組み合わせることが大切です。
屋外でお酒を楽しむときは、足元の蚊対策も意識してみましょう。
「マジ蚊シート」は、普段使っている靴の中に貼って使用するインソールタイプのアイテムです。
足元の除菌・抗菌・消臭を特徴としており、公式サイトではマジ蚊シートを装着した足と装着していない足を使った蚊の独自検証も紹介されています。
BBQやキャンプなど、屋外でお酒を楽しむ機会が多い方は、商品の特徴や検証内容をチェックしてみてください。
飲酒と蚊について勘違いしやすい3つのこと
「お酒を飲むと蚊に刺される」という話は、研究結果だけが独り歩きすると誤解も生まれます。
実験で確認されているのは、特定条件でビール摂取後に蚊の誘引や着地が増えたことです。
飲酒すれば必ず刺されるわけでも、体温だけで原因が説明できるわけでもありません。
誤解①:飲酒で体温が上がるから蚊に刺されるとは限らない
蚊が熱を手掛かりに人へ近づくこと自体は研究で知られていますが、飲酒後の誘引増加を「体温が上がったから」と断定するのは注意が必要です。
2002年のビール実験では、皮膚温度と蚊の着地との相関が確認されませんでした。
2010年の研究では、ビール摂取後に体温がむしろ低下したにもかかわらず、蚊への誘引は増加しました。
つまり、飲酒後に蚊が寄る現象を体温だけで説明することは、主要研究の結果とは一致しません。
二酸化炭素についても同様で、2010年の実験では呼気の二酸化炭素が誘引増加を説明しませんでした。
人の体臭を構成するさまざまな化学物質など、複数の要因を考える必要があります。
誤解②:お酒を飲めば必ず蚊に刺されるわけではない
実験で平均的な誘引の増加が確認されても、飲酒した全員が必ず蚊に刺されるという意味ではありません。
2010年の研究でも、人によって元々の蚊への誘引の強さには差がありました。人への誘引には皮膚のにおいなど個人差の大きい要素も関係しています。
そのため、飲酒は刺されやすさを変える可能性がある要因の一つであり、それだけで結果が決まるわけではありません。
周囲の蚊の数、服装、虫よけ剤の有無、時間帯、肌の露出などでも実際の刺され方は変わります。
「飲んでいないから刺されない」「飲んだから必ず刺される」という二択では考えないほうがよいでしょう。
誤解③:飲酒を控えるだけでは十分な蚊対策にならない
ビール摂取後に蚊への誘引が増える研究があるなら、「お酒を飲まなければ虫よけはいらない」と考える人もいるかもしれません。
しかし、蚊は飲酒していない人にも二酸化炭素や皮膚のにおいなどを手掛かりに近づきます。
飲酒しないこと自体は、虫よけ剤のように蚊を忌避する対策ではありません。
そのため、飲酒の有無に関係なく、蚊が多い場所では通常の防蚊対策が必要です。
厚生労働省も、屋外では肌を露出しないことや虫よけ剤の使用を案内しています。
特に蚊媒介感染症が流行している地域へ行く場合は、「お酒を控えたから大丈夫」と考えず、推奨されている防蚊対策を優先してください。
厚生労働省「蚊媒介感染症」では最新の公的な予防情報を確認できます。
飲酒すると蚊に刺されやすい説についてよくある質問
ビールだけで蚊が寄ってくるのか、飲酒量や刺されやすい時間に基準があるのかなど、「飲酒と蚊」の関係で疑問になりやすいポイントを整理します。
お酒を飲むと本当に蚊に刺されやすくなりますか?
ビール摂取後に蚊の着地率や誘引が増加した研究があります。そのため可能性を示す根拠はありますが、研究人数は多くなく、すべての人や酒類で同じ結果になるとまでは確認されていません。
ビールだけが蚊を寄せるのですか?
代表的な研究はいずれもビールを使用しています。そのため、ワイン、日本酒、焼酎、ウイスキーなどでも同じ程度誘引が増えるかは、これらの研究だけでは判断できません。
飲酒後に蚊が寄るのは体温が上がるからですか?
それだけでは説明できません。2002年の研究では皮膚温度と蚊の着地に相関が確認されず、2010年の研究でも体温や呼気の二酸化炭素では誘引増加を説明できませんでした。詳しい仕組みはまだ明確ではありません。
何杯飲むと蚊に刺されやすくなりますか?
「何杯以上なら刺されやすい」という基準は確認されていません。2002年の研究では350ml、アルコール濃度5.5%のビールが使われましたが、この量が実生活での境界値という意味ではありません。
飲酒するときに一番確実な蚊対策は何ですか?
厚生労働省が案内するように、肌の露出を減らし、ディートやイカリジンなどを含む虫よけ剤を用法どおり使用する方法が基本です。飲酒の有無にかかわらず同じ対策を行いましょう。
飲酒と蚊に刺されやすさの関係についてまとめ
ビールを飲んだあとに蚊の着地率や人への誘引が増加した研究は実際に存在します。
日本の研究では13人、別の研究ではビールを飲んだ25人と水を飲んだ18人が調べられており、いずれも飲酒後に蚊が寄りやすくなることを示す結果が得られています。
ただし、なぜ飲酒後に蚊が寄りやすくなるのかは完全には分かっていません。
体温や呼気の二酸化炭素だけでは説明できない研究結果もあり、代表的な実験はビールを使った小規模研究です。
すべてのお酒やすべての人に同じ強さで当てはまると断定するのは避けましょう。
実際の対策では、飲酒の有無にかかわらず、肌の露出を減らして虫よけ剤を正しく使うことが基本です。
バーベキューやキャンプなど蚊の多い場所で飲酒する場合は、厚生労働省「蚊媒介感染症」などの最新情報も確認し、通常の防蚊対策を忘れないようにしましょう。
BBQやキャンプなど屋外でお酒を楽しむ機会が多い方は、足元のケアとしてマジ蚊シートもチェックしてみてください。
